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即効性はなくてもいつの間にか血となっているから小説を読む。

オラクル・ナイト (新潮文庫)

オラクル・ナイト / ポール・オースター

やはり文章のうまさを随所で感じさせる。著者なのか訳者(柴田元幸)なのかどちらの力量かわからないけど(多分両方)、唸るほどの言い回しが数カ所あった。今思うと付箋でも付けるべきだったのに、先に進むことを優先してしまった。
あとは入れ子(本編/主人公の執筆している小説/小説の中の主人公が編集者として持っている小説)の構造も好き。ダイレクトに結び付くわけではなくとも、どこか繋がっている。有耶無耶ながらもその繋がりを感じ取ったときに小説を読んでいるというカタルシスがある。

ストーリーは幻影の書に比べると随分スケールダウンしているけど、限られた空間で展開される物語がオースターの十八番な気もするし、水平は狭くても垂直の深さがある。
まあでも読んでで明るくなる類いの話ではない。出来事そのものも自分の中で消化しようとせず、そこに隠されたテーマが何かを探るような人は読むのに適しているかもしれない。ここで僕が感じたことを的確に記せればよいが、簡単に記せるならば小説である必要はない気もする。「愛は複雑だし、脳は飛躍する」みたいなことは感じた。

オースターを全ておさえているわけではないが、新作(文庫)が出れば購入するくらいは好んで読んでいる。

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