先日、飯田橋のギンレイホールで『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』と『グランド・ブダペスト・ホテル』を立て続けに観た。(ギンレイホールは2本立ての所謂名画座で、初めて行ったんだけど雰囲気のあるとてもすてきな場所だった。)後者の方が誰に対してもおススメしやすいのだけど、心に引っかかった前者について書いてみる。
つらつら書く前に、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』って邦題はあまりにもダサいので、以下『Inside Llewyn Davis』と記載することにする。
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バグダッド・カフェ / パーシー・アドロン
東京ごはん映画祭にて鑑賞。(ごはん映画祭というイベントについては、また書きたい。)
オープニングも含め数回流れる主題歌のCalling youがこの映画に効いている。真っ赤な夕日の場面をはじめとして、映像もとても印象的。
そういった映画を彩る要素とある意味で淡々と進む物語がぴったり合っている。「淡々と」なんて表現してしまったが、物語としてはしっかりと動いていく。それでも自分と別次元のものとしてではなく、どこか地続きであるように感じるのは、映画全体に漂う静寂な日常感が原因かもしれない。そう、日々は静寂なんだと思う。そこを保ちながら、映画としての抑揚あるのが面白い。ハリウッドならもっと劇的になるだろうし、日本映画ならもっと小難しくなってしまいそうなところを、どっちにも寄らないバランスがとてもいいと思った。(バグダッド・カフェは西ドイツの映画。)
独特のリズム感を生み出す編集にも特徴がある。ゆっくりゆっくり間をとる場面、テンポよく進む場面、いつの間にか魅了されてしまう。唯一少しだけ残念だったのは、ばっさりした終わり方。なんとなく唐突すぎる気がした。
妻はDVDがほしいと言っていたが、その気持ちがよくわかる。手元において、いつでも観れる(時には眺めるだけでもいいかもしれない)状況にしておきたくなる、そんな映画。