虐殺器官 / 伊藤 計劃
テロの時代に、その脅威から身を守るため徹底された情報管理。この本の設定に対して、うまく規定できない余白が人の幸せと密接に関わっているのではないかとそんなことを思った。そしてまた、誰でもない何にも縛られない個としての時間の必要性も感じた。
体の外側の悲劇と内側の悲劇。幸福な時代の不幸な人間、あるいは不幸な時代の幸福な人間。価値の基準が生まれ変わっていくかもしれない。
つらつら書いた文章は別にこのSF小説の内容にそこまでリンクしていないだろうけど、小説のもつ想像力に影響されて書いているのだから、感想と言えなくもない。
著者が若くして亡くなってしまったのが惜しい。
トゥルー・ストーリーズ / ポール・オースター
僕にとっては、小説よりも読むのに苦労したエッセイ集。場面の切り替わりになかなか対応できなかった。
彼が経験した奇妙さが小説の中でも同じ感覚で入り込んでいることがわかった。どうして彼にこれほど変なことばかり起こるのだろうと考えてもわからない。きっとそういう宿命なのだろう。
オースターが船乗りだった一時期、(女の子が半裸で踊るような)酒場での強烈な体験を、強烈な表現で描いた箇所を紹介して終わることにする。
それは肉の畸形ショーだった。白い脂肪がぷるぷる弾む騎馬行進だった。カウンターのうしろのステージで一度に女の子四人が踊っている姿は、『白鯨』主役候補のオーディションという趣だった。女の子一人ひとりが一個の大陸だった。極小ビキニにくるまれた震えるラードの塊。それが四人ずつ次々に交代していく光景は、視覚に対する容赦なき襲撃だった。
(『その日暮らし』より)
ちょっとやりすぎだと思うけど、これが文学だとも思う。
Attack on Memory / Cloud Nothings
最近最も聴いてるアルバム。これぞ僕の描くバンドサウンド。ほとんど弾けないギターをかき鳴らしたくなる。どこにぶつけていいかわからない気持ちをどこかに運んでくれる。
LOOK TO THE SKY / JAMES IHA
休日AMに聴く音楽に新しく入ってきた。クリアで穏やかなのに力強さを感じる。平日だって夜だって聴ける奥深さはあると思うから、もっと聴き込みたい。
THE BEST 2007-2012 俺たちの明日 / エレフォントカシマシ
あまり思い入れもなくレンタルしたが、心に響いた。たまたま今置かれている状況にマッチしただけだとしても、ニュートラルな気持ちで評価するのは僕じゃなくてよい。30代の応援歌。
THE KOLN CONCERT / KEITH JARRETT
この記事を書いているときにたまたまLPをかけている。今より若い頃に聴いた、The Melody At Night, With Youは正直「なんか、つまんないなぁ」なんて思ってしまったが、こっちは勢いみたいなものを感じて随分わくわくする。
Rubber Soul / The Beatles
もうIn My Lifeが好きで好きで。それだけが言いたいがために載せた。名曲すぎて、「今さら何言ってんの?」って感じだと思うが、それでも言いたい。『ただただ素晴らしい』