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この旅に出た理由を文章にしてみる。

Seattle, America

9月前半、ポートランドとシアトルを1週間程旅してきた。旅行記を始める前に、「なぜポートランドとシアトルなのか?(アメリカならニューヨークとかロサンゼルスとかあるでしょうに。)」という誰もが思いつくであろう疑問について、少し説明しようと思う。

そもそもの経緯。長い間やむなく会社を休んでいて、9月くらいからそろそろ復帰するぞと意気込んでいた。しかし会社側の事情もあり、もう少し休暇を取らざるをえないことに。
家に籠っていることにも飽きていたし、こんなに休みを取れる機会もそうそうないだろうと、旅にでも出ようかという気持ちが高まった。ただ、妻は休みが取れそうもないため、1人旅になることも踏まえ、最初は年頭に行った台湾あたりに行こうかと思っていた。
インターネットで格安航空券を調べるも、思ったほど安くない。そこで台湾に限らず適当に目的地を設定して、価格をチェックする。たぶん“シアトル”と打ち込んだのは数回目だ。
その時の気持ちとしては、「まだアメリカ大陸行ったことないしなぁ」程度。ほとんど無意識に近かった。
出てきた金額が意外と安かった。が、金銭面の他、英語に対する不安など、いくつか懸念事項があり、即決はできず。確か2〜3日悩んで、えいやと勢いで行くことを決めた。(その後、アメリカは宿泊費が高いことに気づき、少し後悔したりもした。)

ここまでの記述はあくまで経緯であり、全く理由になっていないことは自分自身が一番理解している。なので、ここから。
少しまじめに考えてみると、「なぜ」に対する理由はいくつか転がっていた。

まず、ポートランド及びシアトルは、コーヒー文化のトレンドを発信している地域であるということが大きい。もちろんコーヒーそのものに対する興味は強い。(このサイトにもCoffee Tripというページがあるくらい。)加えて、カフェが家と職場以外の第三の場所(サードプレイス)として暮らしに溶け込んでいるという話も聞いていた。おいしいコーヒーを嗜みながら、そこで暮らしている(きっと、暮らしていると表現してもおかしくない)人々をこの目で見てみたかった。

また、ポートランドは学生時代の専門分野でよく名前が挙がっていた。全米の暮らしたい都市で、いつも上位にランクインしていることも含め、界隈では有名な場所であり、そこで『都市の豊かさ』を実感したかったのだ。もちろん、世界遺産に身を置くことで心打ち震える体験をするのは素晴らしいが、今、僕は自分の仕事(職能)に対する可能性を改めて知っておきたかったのだ。東京で忙しなく働き、そして不調になったことで、自分が信じてきた都市の豊かさのような概念が消えかかってきていて、それを取り戻したい、あるいは再発見したいという気持ちが知らないうちに芽生えていたような気がする。
そのためには、観光以外にそれなりの規模の経済活動が行われている都市である必要があった。(この場合、端的に言うならフィジカルな開発が行われる場所。)ポートランド。原点回帰するにはうってつけだと思った。観光客の身分で言語的にも拙いことから、深い理解へとは結びつかないかもしれないが、人々の暮らし方や佇まいをできる限り見てきたい。

シアトルにはポートランドのような仕事上の深い理由はなかったが、シアトル中央図書館がある。レム・コールハース設計の。彼は僕の大学時代のアイドルだ。都市と建築がダイレクトに繋がる理論やコンセプトに魅了され、クールなプレゼンテーションに憧れを抱き、オランダで見たKunsthal、Educatriumは今でも大好きな建築の1つ。公立図書館なので、本当の意味での公共建築を感じられるかも知れないとも思った。

旅の最中、そんな仰々しい理由は意識から身を潜めたが、そんな感じで僕は旅に出た。

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