9月7日 東京〜シアトル
初めての一人海外。何か察したのか、深夜便にもかかわらずニケが見送りに来てくれることになった。空港で一緒に夕食を食べることになり、出発時間よりもかなり早く羽田に到着。
時間も時間なので、空港自体は閑散としていたのだが、店はどこも混んでいた。少し並んでとんかつ屋で日本最後の食事。
海外用のWiFiを受け取り、チェックインや手荷物預けを済ませ、しばしニケと談笑をする。いつもだったらどこでも2人で出かけるのに、なんてちょっとばかり感傷に浸りながら、出発ゲートでお別れをした。
搭乗口に到着すると、シアトル便の前のホノルル便さえまだ搭乗を開始していない状況だった。ちょっと途方にくれつつ、最後の悪あがきとしてPodcastで英語のリスニングをして時間を潰す。ホノルル便が出てしまうと一気に人がいなくなった。出発の時間が近づくと、徐々に人が増えてくるものの先程レベルではない。飛行機が空いている期待が高まる。
いよいよ搭乗開始。ビジネスクラスのシートを羨望の目で眺めつつ、エコノミー席へ。想像以上に前のシートとの距離が近い。しばらくすると全員の搭乗が終わる。隣はいない。自由な態勢がとれて、とても嬉しい。
離陸後、軽食としてサンドイッチを食べる。食事のお供に一番搾り。軽く酔う。することもないので、映画を観ようと選び始めると、日本語版があまりに少なく残念だった。なんとなくスタートレックを観始める。恐らく今劇場でやっているものではないと思う。特に思い入れはないが、スターウォーズを手がける予定のJ・J・エイブラムスの監督作品であることが一番の理由。SFとしての見応えもあるし、ストーリーもなかなか面白い。
眠れそうな心地になったので、2つのシートを使い足を縮めながら横になって寝た。機内が寒く、途中でトイレに起きたりもしたが、それなりの時間を眠りに費やすことができた。
夢見心地のまま到着前の食事が運ばれる。メインはオムレツ。フルーツなんかもついてて、比較的当たりだったと思う。
そうこうしているうちに着陸。
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9月前半、ポートランドとシアトルを1週間程旅してきた。旅行記を始める前に、「なぜポートランドとシアトルなのか?(アメリカならニューヨークとかロサンゼルスとかあるでしょうに。)」という誰もが思いつくであろう疑問について、少し説明しようと思う。
そもそもの経緯。長い間やむなく会社を休んでいて、9月くらいからそろそろ復帰するぞと意気込んでいた。しかし会社側の事情もあり、もう少し休暇を取らざるをえないことに。
家に籠っていることにも飽きていたし、こんなに休みを取れる機会もそうそうないだろうと、旅にでも出ようかという気持ちが高まった。ただ、妻は休みが取れそうもないため、1人旅になることも踏まえ、最初は年頭に行った台湾あたりに行こうかと思っていた。
インターネットで格安航空券を調べるも、思ったほど安くない。そこで台湾に限らず適当に目的地を設定して、価格をチェックする。たぶん“シアトル”と打ち込んだのは数回目だ。
その時の気持ちとしては、「まだアメリカ大陸行ったことないしなぁ」程度。ほとんど無意識に近かった。
出てきた金額が意外と安かった。が、金銭面の他、英語に対する不安など、いくつか懸念事項があり、即決はできず。確か2〜3日悩んで、えいやと勢いで行くことを決めた。(その後、アメリカは宿泊費が高いことに気づき、少し後悔したりもした。)
ここまでの記述はあくまで経緯であり、全く理由になっていないことは自分自身が一番理解している。なので、ここから。
少しまじめに考えてみると、「なぜ」に対する理由はいくつか転がっていた。
まず、ポートランド及びシアトルは、コーヒー文化のトレンドを発信している地域であるということが大きい。もちろんコーヒーそのものに対する興味は強い。(このサイトにもCoffee Tripというページがあるくらい。)加えて、カフェが家と職場以外の第三の場所(サードプレイス)として暮らしに溶け込んでいるという話も聞いていた。おいしいコーヒーを嗜みながら、そこで暮らしている(きっと、暮らしていると表現してもおかしくない)人々をこの目で見てみたかった。
また、ポートランドは学生時代の専門分野でよく名前が挙がっていた。全米の暮らしたい都市で、いつも上位にランクインしていることも含め、界隈では有名な場所であり、そこで『都市の豊かさ』を実感したかったのだ。もちろん、世界遺産に身を置くことで心打ち震える体験をするのは素晴らしいが、今、僕は自分の仕事(職能)に対する可能性を改めて知っておきたかったのだ。東京で忙しなく働き、そして不調になったことで、自分が信じてきた都市の豊かさのような概念が消えかかってきていて、それを取り戻したい、あるいは再発見したいという気持ちが知らないうちに芽生えていたような気がする。
そのためには、観光以外にそれなりの規模の経済活動が行われている都市である必要があった。(この場合、端的に言うならフィジカルな開発が行われる場所。)ポートランド。原点回帰するにはうってつけだと思った。観光客の身分で言語的にも拙いことから、深い理解へとは結びつかないかもしれないが、人々の暮らし方や佇まいをできる限り見てきたい。
シアトルにはポートランドのような仕事上の深い理由はなかったが、シアトル中央図書館がある。レム・コールハース設計の。彼は僕の大学時代のアイドルだ。都市と建築がダイレクトに繋がる理論やコンセプトに魅了され、クールなプレゼンテーションに憧れを抱き、オランダで見たKunsthal、Educatriumは今でも大好きな建築の1つ。公立図書館なので、本当の意味での公共建築を感じられるかも知れないとも思った。
旅の最中、そんな仰々しい理由は意識から身を潜めたが、そんな感じで僕は旅に出た。
7月21〜22日 イスタンブール〜大阪〜東京
いよいよ最終日。ホテルで過ごす時間を惜しむように、この日の朝は比較的ゆっくりと過ごす。
朝食のメニューは昨日とほとんど一緒。そういえば、昨日書き忘れたが食事中にチャイかコーヒーか尋ねてテーブルまで持ってきてくれる親切なサービスもありがたい。
部屋に戻ると、ニケの要望でおみやげ一式を写真を撮った。そんなに多くの買い物をした実感がなかったので、1枚の写真じゃ収まらない量に少し驚いた。こうやって無意識のうちに荷物は増えていく。
(さらに…)